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デザインを経営資源として活用する

私の座右の銘にこのような言葉がある

もしお前がある人に 一匹の魚を与えれば
その人は一日だけ身を養えよう
もしお前がその人に 漁を教えれば
その人は生涯を養うことができよう


この言葉はいつも私に多くの事を教えてくれる。
デザイナーが企業に対して一匹のすばらしい魚を提供したとしても、それは短期的な意味でしかない。
その魚がすばらしければすばらしいほど、次に対する期待は大きくなり、次々にそのすばらしいおいしい魚を要求し続けるようになる。
しかし、デザイナーも常にすばらしいおいしい魚を提供することは不可能である。
すなわち、
今後の企業とデザイナーの関係の要点は「魚を与える」という短期の計画から、「漁を教える」という長期計画へと移っていく。
それは未来に対して、つまり明日からの未知の生活、社会、世界に対して、いかに生き延びるかという永続性の問題となる。
ここで確かに言えることは、デザインは時代の変化と共に実にそういったアプローチを続けてきたということである。デザインは常に豊かで、便利で楽しい生活を追求していく中で、漁の手法や漁場の研究などの提案を行なう役割を本来持っているのである。

最近こうした意見に耳を傾ける企業が増えつつあることもまた事実である。
一方、未来に対しても様々な変化が予想できる。未来の市場といっても、未来での活動ができるわけではなく、常にかかわれるのは現在だけである。しかし、現在において近未来に対して予測し、仮説をたてることは出来る。仮説は近未来の生活や市場の兆しを市場になげかけることによって、いろいろな評価を受ける事が出来る。それらの情報をストックし、NEXTの開発につなげることが可能となる。 そこで企業の未来に対する考え方として、積極的に行動しなければ問題解決にはいたらず、情報がなければ技術開発や商品開発が困難になるということが上げられる。

将来は、限られた資源の中でリ・デザインをし、生産をコントロールする構想が有効になり、未来に対しての漁についても、単に漁をするだけでは生涯身を養うことは出来ない。
今後、高齢化社会や、自然環境破壊など未来のイメージはあまり良くない。
しかし、我々が今までの生活の中で培ってきた多くの知恵を見直すことによって、新たな価値観を見い出すことが出来る。地球に対する人間の生存と永続性を考える時、継続するもの、改良するもの、そして捨てるものを見極め、その上で今後新しく取り入れるものをリ・デザイン(見直す知恵)する必要がある。
リ・デザインは、個人の生活面から地球環境に至るまで極めて広範囲である。
そしていかなる場合でも企業活動と密接に関係し、最終的には「人の生活」に関わってくるのである。

このように自らの企業活動が単に個のレベルの商品開発だけでなく、グローバルなレベルでの商品開発を意味しており、今後の企業活動は人の生活に対してどのような影響を与えているか、又与えようとしているかという視点に立ち、企業として明確な価値観と理念を持つことが企業自らのリ・デザイン(再構築)のために必要である。

そこで注意しなければならないのが、無計画生産、無計画販売の危険性である。
魚にも限りがある。漁をする場合、網に引っかかった魚を手あたりしだい取るのではなく、子魚や必要な量以外の魚は海へ帰すべきである。
時に人間が自分自身のことを知らなければならないのと同様に企業も自身を問い直す必要がある。
生まれた時とは社会環境も、それに対する影響力も違うかもしれない。
生産や販売の計画を立てるとき、製品の資源のサイクルについて考えるであろう。

行動の計画を立てるということは「何のために」という目的を明確にすることである。
そしてその目的は社会に対しての役割存在へと掘り下げることができる。サイクルシステムの中での自身とその存続的な目的を把握し、生産活動をコントロールすることにより、最も効率の良い安定した成長が得られるようになる。

(計画性のリ・デザイン)
このような活動を促すには、デザインの持つ経営資産としての機能を新たな企業経営の中に組み込むことが有効であり、今が丁度その時期に来ているのである。
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